遅い交通の再生
モータリゼーションの進展や利用ニーズの多様化を要因とした自動車交通の増大によ る環境問題や、今後の少子高齢化社会に対応するため、コンパクトなまちづくりとそれを支える、総合的な交通戦略計画が求められています。
市内中心部で「歩いて暮らせる街づくり」構想を策定し、住民参加の まちづくりとして『坂の上の雲まちづくり』を進めている松山市へ行政視察に行きました。
交通体系において、自動車交通主体から公共交通や自転車•歩行者主体への転換へ、いわゆる『遅い交通』の再生が全国で進められつつあります。また、歩くことは、健康増進と医療費の節約を生み、健康、医療、福祉の観点からもまちづくりは転換期にあります。
松山市においては、市内中心部は最大の商店街、官庁街を抱える地区で、戦災復興の区画整理により比較的 広幅員の道路を有していることから、既存の道路機能を見直し、道路幅員を再配分し、車 道を削減することにより自動車交通を抑制し、歩行者、自転車空間を拡大する方策を採用しています。松山最大の商店街である大街道に隣接し松山城へのエントランスでもあるロープウ ェイ通りでは、幅員 12m の中で、2 車線 7m の車道と 2.5m の両歩道を有する道路を、5m の 1 車線の車道(路肩 1.0m を自転車道)、3.5m の両歩道に再配分し、電線類地中化やファ サード整備、レンガ敷の歩道や趣のある照明を採用するなどの景観整備を行うとともに、道路線形を設計速度 30km の蛇行形状とすることで通過交通を抑制し、歩行者自転車優先 の道路整備を行ない、歩行者の増加や商店街の活性化に成功しています。
観光地である道後温泉周辺においても、写真のように道路の付替えによる歩行者専用空間の創出や一 方通行により車線数を減らし、駅前からの観光客の導線を確保と景観整備を実施し、活性化に成功しています。
草津市においては、しばらくは人口増加しますが、そのうちにしっかりした基盤と整えていかないとなりません。中心市街地活性化も急務のひとつで、旧草津川跡地を含めて、公共交通の整備と遅い交通の再生を進めていかなければなりません。そこで、人口減少、少子高齢化を迎えるにあたり、今までと異なるまちづくりの視点で、健康、医療、福祉の分野と連携し、道路空間の再配分や自転車•歩行者ネットワークの形成、交通需要マネジメント施策などが必要だと考えます。